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誠実な人

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2022/03/21 (Mon) 15:19:09


 私達夫婦(30代)が、権藤さんに出会ったのは1昨年の秋のことでした。
 町内会での廃品回収で、熱心に働かれていたのが権藤さんだったのです。
 年齢は40代、実直そうな男性で人柄も良く、それは廃品回収での働き振りからも察することが出来ました。
 廃品回収後、缶コーヒーを飲みながらの1服中に交わした会話で『権藤さんが実は近所に住んでいる』といことを知ったことをきっかけに、私達夫婦と権藤さんの交流が始まりました。
 料理が得意だという権藤さん。
 そう遅くない時期に、互いの家を行き来し、ホームパーティを開くようになりました。
 私達はその交流を通じて、権藤さんの多くを知りました。
 早くに奥様を亡くされていること、1人息子は今、東京の大学に進学していること等。
 もっとも、実感されたのは、その人柄の優しさでした。

 その優しさに私たち夫婦は癒され、ますます権藤さんとの距離が近くなり、妻と2人で日曜の夕食の買い物に行くことも珍しくなくなりました・・・

 そんなある日、終業時刻に近い頃、権藤さんから電話が携帯に掛かってきました。
 話したいことがあるとのこと・・・

 私達は駅前で落ち合い、駅の近くの喫茶店に入りました。
 深刻そうな権藤さんの顔・・・
 唐突に切り出した言葉・・・
 「奥様を抱きたいんです・・・」
 私は、あまりに常軌を逸脱した会話に、なんと言葉を返していいのかわからず、じっと権藤さんの顔を見つめました。


 常識的には、そんなことは胸の奥にしまって他人には、ましてや、夫には言ってはならないことです。
 苦しそうな権藤さん、おそらく、悩みに悩みぬいた末、私に打ち明けたのでしょう。
 そのまじめな性格から、そのような会話をしたのだということは十分察せられます。
 彼の表情には、なにか後ろめいた企みのようなものを感じませんでした。
 権藤さんは、決心して語りだしました。

 奥様を亡くされた精神的なショックで、男性機能が働かなくなったこと、しかし、妻と触れ合ううちに、妻のことを思うとエレクト出来るようになったこと・・・
 だから、苦しい胸のうちを、恥を忍んでこのように話をしているのだと・・・

 男性機能の回復、それこそが彼にとっては、今生きる中で明るい希望であり、妻に出会うことでそれが夢ではなくなったこと、そんな思いがヒシヒシと伝わってきました。
 とんでもない話なのに、彼のつたない言葉の数々は実直で、それをみじんも感じませんでした。
 けれども、最終的には私は言葉に窮してしまい「『妻がどう思うかだ』と思います」とだけ答えるのが精1杯でした・・・

 その話を、私は妻にすべきかどうか悩みました。
 結局、悩んだ末、それを妻に告げるのに1ヶ月を要しました。
 それを話したとき、妻はとても悩みました。
 「手でしてあげるくらいで、駄目かな・・・」
 根が素直で優しい親切な妻のこと、結局、放っておけず、彼女なりに倫理観すれすれのところで、結論を出したのでしょう。
 それが手コキだったようです。


 打ち明けてから、そう経たないうちに、決行の日が決まり、それはやってきました。
 妻に話すまでの日々を考えると、あっという間です。
 当日、3人は言葉を交わすこともなく、打ち合わせの通り、リビングに2人を置いて、私は家を後にしました。

 なんとも後味の悪いこと・・・
 この不安で、宙に浮いた気持ちは何なのだろう・・・
 権藤さんの願望が破綻すればいいような、成功すればいいような複雑な気持ちです。

 やがて、居ても立っても居られなくなった私は、すぐさま家に戻りました。
 悟られないようにこっそりと、物音を立てずに、気配を気にしながら、家の奥へ奥へと、私は1心不乱に歩を進めました。
 そして、そっとリビングの襖の間から中を窺いました。

 蛍光灯は最小にまで落としてあり、部屋は薄暗いオレンジ色に染まっています。
 けれども、見るのにはさほど不自由せず、2人の表情まで識別できます。
 むしろ、独特な雰囲気を醸して淫靡です。
 権藤さんと妻は並んで、ソファーに腰かけていました。
 妻は権藤さんの左隣にいて、2人の距離はつかず離れずと言った感じです。
 妻を気使ってか、権藤さんの股間部には膝掛けが被せてあります。
 ただ、膝までズボンとトランクスが下がっており、恐らく、腰掛けの下では、ペニスが顕わになっているはずです。
 下をうつむいていた妻は、慣れない様子で膝掛けの中に手を入れます。
 「あぁ・・・」
 権藤さんが低い声を上げます。
 妻の手が権藤さんのモノに触れたのでしょう。
 あの下で妻の手が・・・
 指先が・・・
 他人の肉棒に触れているかと・・・


 やがて、膝掛けがゴソゴソと左右に動き出しました。
 2人とも無言の状態で、私に知るすべは無いようです。
 あの布切れの下で、なにが行われているのか・・・
 気になって仕方ありません。
 私のそんな思いをよそに、沈黙の中で膝掛けはしばらく動き続けます。
 そんな中、権藤さんが唐突に口を開きました。
 「す、すみません、奥さん。もう少しで・・・」

 『もう少し』という意味は何なのか・・・
 『まさか・・・もう射精をするのだろうか・・・』と、1瞬耳を疑いました。

 「えぇ・・・大きくなってきていますよ」
 妻が恥ずかしそうに、合いの手をいれました。

 私はそれで先程の言葉の意味を、悟りました。
 確かに、膝掛けの真ん中あたりは、テントをはっているかのようです。

 「奥さん、ありがとうございます。私1人ではこんなに早くには大きくなりません」
 その通り、妻を思ってするよりも、その当の本人にされた方が、効果は1目瞭然でしょう。
 「本当にありがとうございます」
 権藤さんは心底嬉しそうです。
 奥さまを亡くされ、精神的に弱くなっていた男性機能の回復を、妻の手により確実なものとし、男性としての誇りを取り戻しつつある。
 そんな様子が彼の笑顔に表れていて、それは1種の清涼感さえ感じさせました。

 「いえいえ、私は・・・」
 妻はなんとリアクションしていいのか、わからないようです。
 普通の主婦には、男性器を勃起させて、お礼を言われた経験なんて、あるはずがありません。
 もっとも、妻の親切心が報われたのは間違いなく、妻も悪い気はしていないでしょう。
 また1仕事始めるかといった感じで、再び妻はごそごそやりはじめました。
 さっきまでとは違う大きな動き・・・
 しごいているのでしょうか。
 しかし、その動きのせいで腰掛けは少しずり落ちたかと思うと、すぐにはだけてしまいました。

 明らかになる腰掛けの下・・・
 妻の右手が権藤さんのアレを握り締めています。
 権藤さんの穏和な性格とは、かなりギャップのある大きめの逞しいペニスをです。
 私はその状況にクラクラになりそうでした。


 腰掛けをまた、掛けますが、再びはだけてしまう始末・・・
 終には、腰掛けなしになりました。
 妻はゆっくりと、上下に動かしています。
 実にぎこちない手つきです。
 手で男性自身を満足させるなんて、経験はありません。
 それでも、心を込めて、ただただ妻はしごきました。

 その光景に眼も眩む思いでしたが、私は、はっと、ローションを用意しておくべきだったと気づきました。
 おそらく潤滑油なしでの状態はあまり心地よいものではないはずです。
 しかし、萎えることなく、持続しつづけるのは、権藤さんの妻への思いなのでしょうか・・・
 結局、かれこれ、15分程経ちましたが、もちろん、権藤さんの肉棒は射精することはありませんでした。

 「奥さん、ありがとうございます。もう、いいんです」
 「でも、男の人ってこんな状態は辛いんでしょう・・」
 親切心から、手コキで楽にしてあげたいと考える妻・・・
 「いやいや、もう、いいのです。私の我侭なのですから。もうこれ以上は・・・」


 さて、少しずつですが、続きを投稿させていただきます。

 1瞬間が空き、権藤さんは思い直したように、あの衝撃的な言葉を妻に投げかけます。
 「奥さまを抱かせてください」
 「えっ・・・」
 妻は、やや後退りしました。
 「やはり、奥さんの思いをたちきれません」
 真剣な眼差しの権藤さん・・・
 「でも私には・・・」
 「わかっています。そうなのです、旦那さんがいらっしゃる。それは重々・・・」
 「ご、権藤さん・・・」
 「もし、奥様がお気に召されないのであれば、いつでもやめます」

 権藤さんの役得でしょうか、男性が女性を口説くようないやらしさというものを、その口調には感じられませんでした。
 他の男性であればどうなることか・・・
 しかし、権藤さんのあくまで誠実で真剣な姿勢は、まじめで面倒見のよい妻にとって、男女の仲とボランティアの境を曖昧にさせてしまうような気がします。
 妻の胸の内にあるものは何なのか・・・
 気になって仕方がありません。


 「本当ですね、わかりました。ただ約束してください。きちんとゴムをつけること、そして夫には秘密にするということ・・・」
 親切心と倫理の間で戸惑った結果、お人よし過ぎる決断を下し、妻は条件を提示します。
 「ええ、必ずお約束します」
 「それから、裸になるのは堪忍してください。恥ずかしいですから・・・」
 そういうや否や、妻はスルスルとパンティを脱ぎました。
 覚悟を決めたら、気持ちの切り替えが早く、変に度胸のある所にはいつも驚かされますが、まさか、こんな時にも、彼女の性格が発揮されるとは・・・
 もっとも、妻はHに対して淡白であり『男性さえ絶頂を迎えることができれば、それで済むのだ』と思っているところも関係しているのかもしれません。

 権藤さんの身体が、ソファーにもたれている妻にかぶさります。
 そして、首筋に軽くキスを・・・
 「奥さん、失礼します」
 妻の太腿に権藤さんの手が触れます。
 そして、そのまま、スカートの中を潜り、妻のアソコへと伸びていきました。
 妻は、このボランティアが早く終わるよう耐えることを決め込んでいるようで、眼を閉じたまま、特には拒む仕草を見せません。
 妻のスカートの中でがさがさと、権藤さんの手が動いています。
 さっきとは逆の構図です。
 権藤さんは遠慮からか、愛撫を性器のみにとどめているようで、他の部位に触れることはしません。
 もっとも、濡れやすい妻のこと、結果的には、それで十分なはずです。
 案の定、権藤さんの指先にも時間が経たぬうちに、湿り気を確認したようです。


 ソファーに仰向けになっている妻の股の間に権藤さんが入り込み、妻の性器にペニスをあてがいます。
 「奥さん・・・、挿れますよ」
 妻はコクリと、うなずきました。
 それを合図に、太い亀頭が妻のアソコをニュッと押し広げ「ヌププ・・・」と挿入されていきます。
 「ああぁァっ・・・」
 いつもは声を出すことのない妻も、さすがに小さく声を漏らしました。

 己の膣で他人の肉棒をしごくこととなる妻・・・
 胸が痛いのに、でも、興奮してしまう私・・・

 「あぁ、奥さんの中に入ってますよ。奥さんが絡み付いてくる!」
 感極まった口調です。
 1旦、根元まで肉棒を入れきったのでしょうか、権藤さんは妻の中を堪能するように動きを止めました。
 「ああぁ、夢みたいだ」
 失われていた感覚を取り戻し、感無量の権藤さん。

 妻を使ってというのが、私を複雑な気持にさせます。
や がて、権藤さんは、腰を動かし始めます。
 最初はゆっくりと、次第にピッチを上げて・・・
 突き上げる度、妻の大きなお尻がたわわに揺れ、ソファーが軋んでいました。
 1方、妻は眼を閉じ、口を真っ直ぐに結んでいます。
 その表情は、何かに耐えているかのようです。
 この行為が終了するのを待っているのでしょうか・・・
 しかしながら、そう易々と終ってくれるはずはありません。


 妻の腰に手をあて、正常位で突き上げていた権藤さんは、己の肉塊を妻の奥へ奥へと打ち込むように、妻の足を自分の肩に乗せ、1層強くピストンしはじめました。
 くの字に折れた姿勢で妻は、グァングァンと突き上げられています。
 まるで、犯されているかのよう・・・
 「はぁ、はぁッ」
 真っ直ぐに結んでいた妻の口が緩み、荒い息遣いが漏れはじめます。

 外見からは何が起きているのか察することはできませんが、おそらく、権藤さんの太くて長いペニスが、妻の子宮を、今までに経験したことのない感覚で突き上げているに違いありません。
 ズンズンとした腰のグラインドに合わせ、しなる妻の肉体。
 妻の瞼は相変わらず閉じたままですが、時折、眉を寄せ、苦悶とも快楽とも取れる表情を見せ、私にとっては非常に悩ましく思えました。
 権藤さんは調子を得たのか、ピストンがリズミカルで力強いものになっていきます。
 「はぁ、んはぁ、ぁっ」
 妻は、更に息を荒げ、権藤さんの背中に手を回し、ひしとしがみつきました。
 密着する2人。
 ギシギシと軋むソファー。

 「お、奥さん…、いい、いいですよ」
 権藤さんは、1心不乱に妻の身体で快楽を貪っています。
 「お、奥さん・・・いいですッ!」
 何度も同じ、台詞を繰り返す権藤さん。
 そんな権藤さんに、妻が挿入後はじめて口を開きます。
 「はぁ、はあぁっ。権藤さんっ・・・いい?気持ちいいッんですか?」
 「えぇ、さ、最高ですよ。旦那さんに申し訳ありませんが・・・」
 妻の閉じていた眼がゆっくりと開き、権藤さんと視線が合います。
 「奥さまはどうです?」
 「はぁふっ、やだぁ。んはっ・・・」

 妻は、さっと視線をそらしました。
 追い掛けるように、権藤さんが唇を寄せます。
 なかば強引なキスでしたが、妻はそれに応えるように自ら唇を重ねました。
 妻が自らそんな・・・
 私は思わず身を乗り出しました。
 今までは、受身だったのに・・・
 しかも、権藤さんの舌を受け入れているようです。
 ディープキスは、日頃いやがっていたはずでしたが・・・
 逞しい雄の象徴で、妻は雌になってしまったのでしょうか・・・
 舌と肉棒の侵入を許し、口内と膣内をかき乱されている妻・・・
 覆い被さった権藤さんの胸の中で犯されている妻・・・
 普段の貞淑で優しい妻の姿はどこへやら、妻がとても淫らに見えます。
 2人の長い接吻は終り、唇を放すとタラーッと睡液が糸を引きました。


 権藤さんの腰の動きが早くなっていきます。
 絶頂が近いのでしょう。
 「奥さん!イク、いきそうです」
 腰使いが、更に加速していきます。
 「奥さん、奥さん、奥さん!」
 権藤さんのカラダがピクっと跳ねた後、全身がわななきました。
 そのまま動かない2人。
 「はぁはぁ」と息遣いだけが聞こえます。

 しばらくすると、権藤さんは腰を引き、ペニスを抜きました。
 コンドームの先には大量の精液が・・・

 「沢山でましたね」
 妻はコンドームを優しく、はずします。
 そして、結んで閉じるとテイッシュに包みました。
 「これは私の家で捨てましょう」
 権藤さんが、妻の手からテイッシュを受けとります。
 「おっと、こんな時間。旦那さんが心配しているでしょう」
 それを聞くなり、私は反転し、玄関に向かいました。


 玄関を静かに開け、家を出ると、私は駆け出していました。
 訳もなく、1心不乱に走りました。
 頭の中は真っ白で、なにも考えられません。
 興奮か、混乱か、それさえ定かでないのです。

 どれくらい走ったのでしょうか・・・
 足を止めると、そこは家からかなり離れた高台の公園でした。
 ゆっくりと夕日が沈んでいきます。
 もう、こんな時間になっていたことに気づきました。
 オレンジ色に染まった空を見ると、すこしだけ気持ちが落ち着いて来ました。

 しかし、それも束の間・・・
 オレンジ色の空が、あの部屋の照明を思い出させ、2人の行為をフラッシュバックさせます。
 妻に、覆いかぶさった権藤さん・・・
 静かな息遣い。
 交わる2人の肉体。
 重なる唇。
 知れたる妻なのに、それはとてもとても艶やかでいやらしかった。
 なんとも・・・

 ブルルルル、携帯のバイブレーションが私を現実に引き戻しました。
 妻からです。


 面をしばらく眺め、意を決し、携帯電話を耳にあてます。
 「もしもし、あなた?」
 何故だか、妻の声が懐かしく聞こえました。
 遠くに行ってしまった誰かと再会して、話すような懐かしさです。
 「どこに居るの?終わったよ・・・」
 「終わった?」
 「うん、終わった」
 『終わった』という言葉が、私の中に重く沈みます。
 本人は、何が終わったというつもりでしょうか。
 私が目撃したあの行為でしょうか。
 まさか、私が知っているとは思ってもいないはずです。
 「大丈夫だった?」
 「ええ・・・」
 少しだけ、声がトーンダウンするのがわかりました。
 「本当に?」
 「うん・・・、大丈夫だよ。それより、早く帰ってきてね」
 「ああ。今から帰るよ」
 少しの間の後、携帯電話はプツリと切れました。

 私は、携帯をひしと握り締めると、妻の言葉に後押しされるように、高台から坂を下り始めました。
 家に帰れば何が待っているのか、深く考えたくはありませんが、今は家に帰ること、それだけです。
 高台からの坂道を下りきると、握り締めた携帯がブルブルと再び振動を始めました。
 携帯を耳に持って行き、真正面に顔を向けると、50メートル先に男性が携帯を持ってこちらに軽く会釈をしているのが見えます。

 権藤さんでした。


 私達は、また、駅前の喫茶店に入りました。

 「私には説明責任があるんじゃないかと思いまして・・・」

 権藤さんは、以前、喫茶店で打ち明けた時よりも、更に緊張した趣で、話出します。
 私は、真実を知っているだけに、何が彼をこうにまで、硬直させているのかは判ります。
 もっとも、こちらがすべてを知っているとは、つゆとも思わないでしょう。
 そんな情報の優位からか、私は妙に冷静でした。
 どんな言葉が続くのか、そう考える余裕さえありました。

 「お2人にはなんとお礼を申し上ればいいのか。お陰様で・・・、固さを取り戻すことが出来ました」

 彼は、軽くその場で頭を下げた後、自分の分身が固さを取り戻していく様を、忠実に、私へと説明しはじめました。

 「明かりを落としてオレンジ色になった部屋で、私達は、ソファーへと腰掛けました。私は奥様を左にして、どうしようもないくらい心臓がドキドキしていました」

 唇をかすかに震わせながらも、1言々々、言葉を選びながら話を続けます。

 「奥様のことを考え、私は、ひざ掛けを掛けました。もちろん、その下では、私はなにも身につけていません」

 権藤さんはコーヒーを1杯、口に含むと目を閉じました。

 「2人とも、次にどうアクションを起こせばいいのか、どちらが先手をとるのか。互いに固まってしまいました。あれほど、どうしようもないくらい長く感じられた時間はありません」

 彼は、目を閉じたまま、話を続けます。
 記憶を引っ張りだすように、瞼に写ったあの情景を思い出そうとしているのでしょうか。

 「しばらくすると、奥様の指先が私の分身へと触れ、思わず、全身に電気が走りました。奥様の指が柔らかで、少し寄った時に香った奥様の髪の匂いがなんとも言えませんでした。全てが特別でした」

 私は、目を閉じた彼の顔をじっと見つめました。
 もし、彼が目を閉じていなければ、視線のやり場に困っていたことでしょう。
 彼が目を閉じることによって、互いの顔色を窺わなくてよいのです。

 「私の中で何かが沸騰し始めていることに気づきました。もう少しで、求めていたあの感触を取り戻せる予感がしました。そして、ついに、握り締めた奥様の手の中で、分身がズンと天を向いたのです。永らく忘れていた感覚でした。このまま死んでもいいとさえ感じました」

 心持ちか、権藤さんの頬が赤みを帯びているような気がします。
 あの情景を思い出して、興奮しているのでしょうか。

 「それに続いて、勃起した肉棒を扱かれる感覚・・・まさか、こんな感覚を再び取り戻せるとはおもいませんでした。奥様は俯きながら視線をそらして、しごいてらっしゃいました。しごくく動きでは無理があるのでしょう。何度も腰掛がはだけ、その度に、奥様はお戻しになりました。それでも、はだけてしまう。ついには、奥様は掛けるのをおやめになりました」

 あの思い切りのよい献身的な姿は、私も忘れられません。

 「そこまでされて、献身的に他人のペニスをしごく奥様の姿のいじらしさに、私は胸を打たれました。けれども、射精に至らない自分へのジレンマ・・・・」

 そこまで言うと、彼は閉じていた目を開き、またコーヒーを口に含み、下へ視線をやりました。
 事実を伝えるつもりなのだ、私はそう察しました。

 「実は・・・」


 もちろん、私は、その先の出来事を知っていました。
 そして「全てを知っている」と権藤さんを、むげも無く静止することも出来ました。
 しかし、私は、敢えて、それをしませんでした。
 償いとして、全てを告白させようという意地の悪い気持ちと、権藤さんの口から語られる情事を聞いてみたいという気持ちが、それを思いとどまらせたのです。
 思えば、あの瞬間、止めに入らずに覗いていた心の奥底と、関係があるのかもしれません。

 「はぁぁ・・・」
 権藤さんは、深いため息をつくと、小さな声で続けました。
 「私は・・・奥様を抱いてしまったのです」
 私は、目をそらさず、権藤さんの顔を見つめました。
 「奥様の健気な奉仕にも、私は、射精することができず、射精に至らない自分に対する葛藤のようなものを感じました。独りよがりな葛藤です」

 権藤さんは、私から視線をそらすように、再び目を閉じます。
 それでも、彼はありのままを言い続けます。
 胸のうちを振り絞ります。

 「回復した分身に、射精、そして、女体という更に至上の喜びを与えたいという衝動、今そばに居る奥様を抱いてみたいという欲望、全てが入り混じったとき、思わず『奥様を抱かせてください。』と口にしていました。私は、なんとか奥様を言いくるめようと、必死でした」

 こんな気持ちで、あの場に居たのかと・・・、衝撃的でした。

 「優しい奥様は、私の無理な願い事を、旦那様にはもちろん秘密の上、ゴムをつけるという条件と引き換えに、承諾をしてくださいました。悪いのは私です。奥様の優しさに付け込んだのも同然です」
 権藤さんの話は止まりません。
 罪悪感からか、全てを告白しなければならないかのように喋り続けます。
 「恥ずかしいからと、パンティだけを脱いだ奥様の中に私は挿入しました。奥様の中は、暖かく、私のペニスを優しく包み込みました。まるで、再び、童貞を失ったような気持ちでした。引き抜こうとすると、私のイチモツに奥様が絡み付いて、腰砕けになりそうでした。突き上げる度、服の上からも乳房が揺れるのがわかり、しばらくすると、奥様の頬がうっすらと桃色に染まって、じんわり汗を吹き出していく様子に益々欲情してしまいました・・・」


 「たまらず、私は欲望に任せるまま、奥様の足を担ぎ上げ、己の肉塊を打ち付けました。その時の眉間を寄せた奥様の表情が悩ましく見えたこと・・・奥様が私にしがみついて、身体が密着し、私たちは1つになりました。全てが最高でした」

 興奮が極まっていくのでしょう。
 権藤さんの言葉の1つ1つが、次第に力強くなっていきます。

 「私は思わず、いい、いいと連発しました。それからは、無我夢中です。射精の感覚が近づいているのがわかりました。久方ぶりの射精です。しかも、奥様というすばらしい方を相手にしての射精。私は幸福感に包まれたまま、絶頂を迎えました」

 すこし間を空けた後、権藤さんはゆっくりと続けました。

 「行為の後、奥様は、コンドームを処理してくれました。実にけなげな奥様ですね。そんな奥様を見ているとムラムラとしてきて『射精したペニスを口で清めて下さいますか?』と、私は口に出してしまいました」

 まさか、私が立ち去った後にこんなことがあったとは知りませんでした。
 私の手がじんわりと汗ばんでいきます。

 「口でですか・・・」

 喫茶店に入った時の様な余裕は少なくなり、私は沈黙を破らざるを得ませんでした。

 「ええ、口でです。すみません、私は取り乱していたのです。もちろん、奥様は1瞬驚いたような顔をされていました。けれども、優しさからでしょう、ソファーに腰掛けた私のペニスを口に含んでくれました」

 ソファーに腰掛ける権藤さんの股間に、顔を埋める妻の姿が浮かびました。
 なんとも強烈な光景です。

 「そして、なれない様子でしたが、搾り取るようにくわえつつ、舌で舐め取ってくれました」

 文字通り妻は清めたわけです。
 信じられませんでした。
 けれども、あの場の雰囲気で親切心が極まってということも否定できません。

 「モゴモゴとぎこちなく口を動かす奥様・・・奥様の口の中に私の残り汁が入っているのがわかりました。私は不思議な衝動に駆られて、奥様の唇を奪って舌を入れてしまいました。実に変態的な行為です」

 なんと、清めた妻の口の中に・・・
 私は想定外のことに唖然としました。

 「私は、奥様の舌に自分の舌を絡みつかせました。奥様はあっけにとられて、私の為すがままそれを受け入れられました」


 「受け入れた」この1言に、脳髄をハンマーで直接叩かれたような衝撃が走ります。
 想定外の行為は、更に、信じられない結果を生むのではないか、つまり『また交わるのではないか・・・』と頭に疑念がよぎりました。
 もしそうであれば、今度は最初の奉仕としての行為でなく、男女の情事そのものであることは認めざるを得ない・・・

 「奥様と私の舌はザーメンを絡めあって、グチャグチャと卑猥な音を立てていました。私は、もう、どうしようもないくらい、興奮をしていました」

 私の心拍数は確実に上がっていってます。
 そんな戸惑いをよそに、権藤さんは話しを続けました。

 「しかし、唇を離すと、奥様は『もう、堪忍してください。また、これ以上は・・・』と困った顔をされました。そこで、私はやっと我に帰ったのです」

 私は、軌道修正をした妻に内心ホッとしました。

 「性欲とは恐ろしいものです。最初は、私1人で押さえこまなければならない欲望だったのに、奥様の優しさに付け込んで、あれよ、あれよと、奥様を・・・もう、弁解の仕様はありません」

 この懺悔の気持ちを伝えるために、あの場所で、彼は私を待っていたのでしょう


 「私は、少し気まずい雰囲気の中、帰り支度をしました。その中で奥様が、私にふと尋ねられました『なぜ、私だったら良かったのですか?』」

 確かに、それは気になる事項でした。
 なぜ、妻のことを思うとエレクトできるようになったのでしょうか・・・

 「私は、奥様の真摯な視線に正直に答えました『あなたが亡くなった私の妻に似ていたからです・・・』」
 「私の妻が権藤さんの奥様に似ているのですか?」
 「ええ。奥様も同じ質問をされましたよ『私が権藤さんの奥様に似ているんですか?』と。たしかに、奥様は私の妻に似ていました。容姿も、性格も雰囲気も、全てがそっくりでした」

 妻に権藤さんの奥様の面影を見出したこと、これが、彼を突き動かしていたのでしょう。
 彼の不能だったイチモツを甦らせてしまった妻・・・
 全ては、権藤さんと権藤さんの奥様との愛の記憶なのでしょうか。

 「だからといって許されるわけではないのは承知しています。ただ、奥様と1緒のときは本当に楽しかった」

 心底嬉しそうな感じが、口調から読み取れます。

 「『あなたに会うたび、いつも妻に会えたようで楽しかったですよ。そして、今回のことは、奥様には大変申し訳ないことをしたと思います。でも、妻で、私の中がいっぱいになりました』」

 権藤さんは、妻に話した台詞をそのまま私に喋りました。

 「『奥様をとても愛してらっしゃったのですね?』と聞かれ、私は沈黙しコクリとうなずきました」

 しばらく、権藤さんは無言になりました。

 「私の目が潤んでいるのが自分でもわかりました。そのまま、私達は玄関に行きました。帰り際、奥様は小さな声でおっしゃいました『また、奥様に会いたい時は、私が奥様になります・・・から』」

 妻が、そんなことを・・・

 「妻が『権藤さんの奥様になる』と言ったのですか?」
 「ええ、おっしゃいました。小さな声でしたが・・・私はどういう意味だろうと考えてしまいました」

 確かに、どういう意味なのでしょうか、肉体関係を許すということなのでしょうか。


 「考えた末、奥様に正直に伺いました」
 「正直にですか?」
 「ええ『聞き間違いで無ければ、今、私の妻になるとおっしゃいませんでしたか?奥様にはだんな様がいらっしゃるのに?』と」
 「妻はなんと?」

 権藤さんは妻の台詞を繰り返します。

 「『ええ、私には夫が居ます。とても愛している夫が居ます。そして、権藤さんもとても愛している奥様がいらっしゃった。でも、亡くなられて、今は居ない。私は、夫を愛することが出来ますが、権藤さんは出来ない。私は夫をとても愛している分だけ、権藤さんの辛いお立場がわかるのです。だから・・・』」
 「だから?」
 「『権藤さんのお気持ちが少しでも楽になればと・・・』」
 「そんなことを?」
 「ええ、そうおっしゃって頂けました」

 愛するものがいるから、愛するものが居なくなったものの立場がわかる。
 だからこそ、愛するものが居るのにもかかわらず、愛するものが居なくなったものの慰みを引き受ける。
 つまり、私を愛しているからこそ、権藤さんの奥様の身代わりになるのだということ・・・
 権藤さんがいたたまれなかったというのはわかります。
 けれども、屈曲している論理に、私は、困惑してしまいました。


 「ただ、私にはそんな機会はもうないでしょうがね」
 「機会が無い?」
 「ええ、今度、転勤が決まっているのですよ」
 「転勤?どちらに転勤されるのですか?」
 「九州の南、鹿児島の向こうの離れ島にきます。こんな年齢なのに転勤なんて困ったものです。何年後にもどってくるのか、それさえわかりません。」
 「そうなのですか・・・」
 権藤さんをこんな風に走らせたのは、転勤という事情もあったのでしょう。
 不能を回復させるかもしれない、奥様とそっくりな妻に出会った権藤さん。
 けれども、彼に残されていた時間は限られていたのでした。
 だから、ちょうど1ヶ月前「奥様を抱かせてください」と衝撃的な発言をされたのでしょうか・・・

 そして、私達は喫茶店を出ました。
 「機会がないといいながら、実は奥様ともう1度、最後にもう1度と思う未練がましい私が居ます」と言うと、いきなりその場で頭をつき、土下座をしました。
 「もう1度奥様を抱かせてくれませんか?」
 「権藤さん、こんな道端でやめてください」
 私は、突然の行為に驚きました。
 けれども、権藤さんはやめようとはしません。
 私の頭の中に、いろんなことが駆け巡ります。
 権藤さんはもう南の離れ島に行き、会うこともなくなって、これが最後の行為になるであろうこと。
 妻が優しさから、身代わりになることを志願したこと。
 どうしようもないくらい正直でストレートな権藤さんのこと。
 いざとなれば、最後の最後で、妻がストップをかけるのではないかということ。
 私に対する愛が、身代わりになる愛よりも強いのかどうかということ。
 私の頭の中では、ある方向へと結論が傾いていきました。


 数日後・・・
 私の元に小包が届きました。
 差出人は不明。
 中にはDVDのディスク。
 ふと、私の脳裏にあるイメージが浮かびました。
 おそらく、これは、権藤さんと妻に何か関係がある。
 私は、理由がつかない直感を頼りにDVDをプレイヤーへ入れました。

 ジジと読み込む音がした後、しばらく黒い画面が続き、大きなベッドと2人が写りました。
 どうも、ラブホテルのようです。
 妻は、バスタオルを巻き、権藤さんはバスローブを羽織っています。
 まさか・・・
 こういう報告のしかたとは思いませんでした。
 2人の間には、意識してなのか、若干の距離がありました。
 前回にもあった距離です。
 「奥さん、いいのですか?」
 「・・・正直、私、悩んでいます。この前はあんなこと言ったのに・・・」
 「ええ、でしょう。やめましょうか。私も・・・」
 「いえいえ、でも・・・権藤さんは転勤されるわけですから・・・」
 間が開いた後、決心したように権藤さんは口を開きます。
 「申し訳ありません。奥様のご好意に甘えさせて頂きます」
 妻は、言葉を発せずに頷きました。

 権藤さんが距離を埋めようと妻に近づきます。
 その拍子に妻の手が、権藤さんの股間に触れました。
 妻が何かに気づいたようです。
 「権藤さんの・・・なんとか大きくなって、くれるようになったんですね」
 「ええ、奥様のお陰で・・・それでも、まだまだ、完全にとはいかなくて・・・」
 「そうなんですか・・・」
 その次の瞬間、私は目を疑いました。
 妻の手が、権藤さんの股間に手を伸ばしていたのです。
 「奥様・・・」
 権藤さんのバスローブははだけ、巨根が妻の手に握られていました。
 「私が、権藤さんの奥様だとしたら・・・」
 前回のようにゆっくりと、権藤さんの根を上下にしごきだします。
 そして、そう経たない内に、妻は権藤さんの股間に頭を持っていきました。
 おい、まさか・・・
 頭の中にある予感が駆け巡ります。
 「奥様のようには、元気付けられないかもしれませんが・・・」
 妻がぎこちない様子で、権藤さんの亀頭を口にくわえました。
 予感した通りでしたが、私は何度も目を凝らしました。
 嘘だろう。
 それでも、事実は1つ。
 確かに、画面の中では妻の唇が、権藤さんのモノを含んでいるのです。
 いつも見慣れている妻の唇が、他人の肉棒をくわえている。
 「奥様、ああ、す、すごい」
 権藤さんは、妻の口奉仕に身を仰け反らせます。
 心を込めて、妻は竿へと舌を這わせ絡ませています。
 男のポイントを抑えているかはどうかはわかりませんが、献身的なフェラチオは征服感を煽り、興奮させるものがあります。
 1方で、権藤さんの手は、やや遠慮がちに妻のお尻を撫で始めます。
 けれども、妻は特に抵抗もしません。
 変に度胸のいい妻のこと、こうなった時から、何が起こっても受け入れる覚悟をしているようです。


 権藤さんは、それを察し、妻の双丘から太腿に、そして、アソコへと手を向かわせました。
 妻が権藤さんの肉棒に奉仕し、1方、権藤さんは妻のアソコをいじっている絵柄に、私の脈動は更にヒートアップしていきます。
 「はあっ・・・」
 権藤さんの前戯に、妻は、肉棒を放し身体をビクッとのけぞらせます。
 画面の中、時々、垣間見える権藤さんの指先は艶を持って光り、妻のアソコは濡れていることが見て取れます。
 フェラチオと前戯の粘着質な音がしばらく部屋に響いた後、権藤さんは、急に妻の身体を自分の方に寄せます。
 権藤さんのなすがまま、妻は、自然と股間から顔を上げ、権藤さんの胸板へ背を向いて抱き寄せられる格好になりました。
 同時に、バスタオルがはだけて、妻の身体に露になります。
 「権藤さん・・・」
 妻は、後ろに顔を向け、少し戸惑った口調で名前を呼びます。
 「奥様・・・」
 視線が交わる二人。
 妻の唇を強引に奪います。
 舌が入っていくのは明らかです。
 すでに、妻の中では、舌を絡めあうキスというのは抵抗感がなくなっているのでしょう。
 背後から妻の乳房をもみくだします。
 「んんん・・・・」
 妻は、画面の中で、乳房を揉まれながら、舌と舌が絡み合う接吻をしています。
 まるで、アダルトビデオのよう・・・
 しかし、画面に映っているのは紛れも無く私の妻です。
 しばらくすると、ツーッと唾液を垂らし、唇が離れました。
 権藤さんは、備え付けのコンドームを手に取ります。
 しかし、権藤さんも緊張しているのか、なかなかゴムが被せられません。
 そんな権藤さんに妻はそっと身を寄せ、横から手を伸ばしました。
 「奥さん・・・」
 妻は、甲斐甲斐しい様で、権藤さんを手伝います。
 不慣れな手つきでしたが、なんとかペニスにゴムを装着させました。
 その様子は、まるで本物の夫婦のようで、私は複雑な気持ちになりました。

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